オートクレーブの基礎知識

最もポピュラーな滅菌手法、それはオートクレーブを使った高圧蒸気滅菌です。
滅菌対象物の形状や処理量に合ったさまざまな機能を持った装置が存在します。

オートクレーブとは?

オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)とは、大きな熱エネルギーを持つ高温の蒸気を滅菌物に浸透させて微生物や芽胞を死滅させる滅菌装置です。
水は大気圧状態では100℃で沸騰し水蒸気となりますが、密閉した容器内で圧力を上げると沸点が100℃以上になり、より高温の水蒸気を作ることができます。
オートクレーブは缶体内(圧力容器内)を高温蒸気で満たすことで、滅菌に必要な121℃や134℃といった高温高湿環境を作り出しています。

蒸気発生方式

オートクレーブは缶体内を蒸気で満たすため、主に電気ヒーター式と蒸気供給式の2つの蒸気発生方式があります。
日本国内の研究室や実験室では、設置スペースの問題から電気ヒーター式が多く採用されています。
対して、蒸気供給式は設置に大型設備導入が必要であり、基本的に後から導入することが困難です。
蒸気供給式は、電気ヒーター式に比べ導入コストが高くなります。

電気ヒーター式

缶体内のヒーターで水を加熱し、蒸気を発生させる方式。ESTERI全製品に採用されています。

メリット
基本的に電源接続のみで使用可能な場合が多く、床置き型や卓上型、横型などサイズバリエーションが豊富です。
デメリット
缶体内で水を加熱して蒸気を発生させることから、昇温に時間がかかり、トータル運転時間が長い傾向にあります。また、大型化するにはヒーター容量を大きくする必要があり、消費電力が大きくなることから不向きとなります。
元蒸気式(蒸気供給式)

外部のボイラーで発生させた多量の蒸気を一気に缶体に送り込む方式です。

メリット
予め作られた蒸気を缶体内に送り込むため昇温速度がとても早く運転時間が短縮されるため、1日の運転回数を多くこなせます。また、大型のため大量処理が可能です。
デメリット
蒸気を作り出すためのボイラー設備が必要であり、大掛かりな設置工事が必要です。
また電気ヒーター式に比べて導入、ランニングコストが高額になります。消費電力が大きく少量の滅菌には向かず、蒸気発生のための準備時間が必要です。(すぐに使用できない)
ボイラー     オートクレーブ

空気抜き方式

オートクレーブは前述の通り、高温の蒸気を滅菌物に浸透させて微生物を死滅させる装置です。
高温の蒸気を隅々まで浸透させるため、缶体内や滅菌物に残留した空気を可能な限り除去し、蒸気に置き換える(限りなく飽和蒸気に満たされた状態にする)必要があります。この条件を満たしていない、つまり空気が残留し、蒸気が十分に満たされていない状態では滅菌不良になる恐れがあります。
そのため、滅菌工程の前に缶体内の空気を除去する『空気抜き工程』は滅菌効果を左右する非常に重要な工程となります。

空気が残留した場合の問題
滅菌不良
空気は蒸気に比べて熱伝達率が低く、空気が残った部位は十分な加熱が行われません。
特に以下のような場所では空気が溜まりやすくなります。

“滅菌バッグ内 多孔質材料内”
”ガラス容器内 長い配管やチューブ内”

その結果温度が低い箇所(コールドスポット)が発生し、微生物が残留するリスクがあります。
圧力異常
空気は加熱すると膨張します。空気抜き工程で抜けきれなかった空気は、滅菌温度に対する飽和蒸気圧以上の圧力になってしまい、滅菌不良になるだけでなく、圧力を監視する安全装置が働き、オートクレーブが正常に動作しません。
主な空気抜き方法
重力置換式

加熱により発生し続ける蒸気により空気を押し出す方式。

メリット
構造がシンプルで低コスト
デメリット
空気が抜けにくい形状の滅菌には不向き
主な用途
液体培地 ガラス器具 金属器具
該当機種:ENSEASETVESSESS-D
加圧パルス式

昇温時に加圧と減圧を繰り返し空気を押し出す方式。加圧することで空気の膨張を促し減圧時に一気に空気が抜けるため重力置換式に比べ空気が抜けやすくなります。

メリット
重力置換式に比べて空気抜き性能が高い
デメリット
真空ポンプ付きに比べて空気抜き性能は劣る
主な用途
滅菌バッグ チューブ 金属器具 廃棄物滅菌
該当機種:EFN
プレバキューム方式

真空ポンプにより缶体内の空気を引き抜く方式。

メリット
高い空気抜き性能により蒸気浸透性が高く再現性に優れる
デメリット
価格が高い
主な用途
滅菌バッグなど包装滅菌物 繊維類 フィルター
廃棄物滅菌 医療器材 動物飼育資材
該当機種:EFV

乾燥方式

オートクレーブは滅菌後の乾燥工程を自動で行う乾燥機能付きモデルがあります。
滅菌工程終了後に缶体内に残留する蒸気や凝縮水を除去することで、滅菌物を清潔かつ乾燥した状態で取り出すことが可能です。
これにより、保管時の再汚染リスクを低減するとともに、次工程へスムーズに移行することができます。
特にガラス器具や金属器具、滅菌バッグに封入された器具類では、十分な乾燥が品質維持や作業効率の向上に重要な役割を果たします。
そのため、乾燥機能付きオートクレーブでは、滅菌物の構造などに応じて熱風乾燥方式や真空乾燥方式などが採用されています。

熱風乾燥方式

除菌した空気を送風ポンプで送り、缶体内の蒸気を排出する方式。

メリット
簡易乾燥機能のため低コスト
ガラス器具や梱包されていない器具に適している
デメリット
温度上昇が緩やかで乾燥時間が長い
包装された器具やチューブ状の物品は乾きづらい
主な用途
ビーカー フラスコ シャーレ
該当機種:ESS-D
真空乾燥方式

蒸発した水分を真空ポンプで強制的に引き抜く方式。

メリット
真空引きにより沸点を下げ、試料へのダメージを軽減する低温乾燥が可能
強制排出するため乾燥効率が良い
乾きにくいチューブ状や繊維、複雑形状な器具の乾燥に最適
デメリット
構造が複雑化するため高コスト
主な用途
包装器具 チューブ 医療器具 中空器具 繊維類
該当機種:EFV

高地で使用する際の注意点

高地(標高1000m以上)でオートクレーブをご使用される際は次の点に注意が必要です。
水の沸点は大気圧に依存します。標高0m(1気圧下)では100℃であった沸点が、標高が上がり大気圧が低くなるにつれ、100℃未満に下がっていきます。

オートクレーブは空気抜き工程まで缶体内と機外の圧力はほぼ等圧です。
標高1500mの沸点95℃の環境では、缶体内の温度も95℃付近までしか上がらない状態になります。

空気抜き方式に重力置換式を採用する多くのオートクレーブで、1気圧下での沸点100℃を空気抜き終了条件の一部として動作プログラムに組み入れています。つまり、缶体内温度が100℃に満たない状態が続くと、空気抜きが永遠に終わらず滅菌運転に進むことができません。

そのため、高地でオートクレーブを使用する場合は、設置場所の標高に応じて適切に条件設定された装置を使用する必要があります。(ESTERIでは各シリーズ高地対応仕様をご用意しております)

標高(m)水の沸点(℃)
0100.0
1,00096.7
1,50095.0
2,00093.4
2,50091.8
3,00090.2
3,50088.7
4,00087.0